盆の踊り子

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この土日は向かいの公園で盆踊りが開催された。
以前はまず土曜日の昼間からカラオケ大会があり、その後地元の中学校の吹奏楽部の演奏があって、それから盆踊りが始まる、という流れだったが、さすがにカラオケ大会は苦情が多かったのかここ数年開催されていない。
本当に良かった。
不思議なもので、盆踊りの曲が延々と流れるのは全然大丈夫なのに、素人さんのカラオケ大会を聞かされるのは苦痛だった。やっぱり民謡歌手の歌が相当上手だからかしら。
以前のブログにも書いたが、祭りの時期になると人々はやはり浮足だってしまう。
7月の中旬くらいから近所の小学校の体育館で盆踊りの練習が始まって、子供も大人もウキウキと出かけていたし、先週、公園に櫓が設置された後には、うちの前を歩くお散歩中のおじさんが携帯電話で即座に「もうねえ、櫓ができてるから!今週末の!お祭りの!」と誰かに報告していた。

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よよよいよよよいよよよいよい!あ、めでてえなあ
そしてお祭り当日の土曜日の午前中、近所の整骨院のベッドで電気を流してもらいながら横たわっていると、先生とおばさんの会話が耳に入ってくる。
どうやらおばさんは盆踊りの踊り子さんらしく、この土日は夕方からずっと踊るのだそうだ。「えええ?大丈夫?盆踊りだからそんなにキツくないとは言えさあ、月曜日、起きれないんじゃない?仕事でしょ?」先生は言う。
更に「なに、練習まであんの?そんなのやってたんだ~」と驚く先生。
そのたびに「大丈夫よ~、夕方から2時間ちょっとだし」「まあ、好きだからさ」「月曜はホラ、あたし休みだから」「今年はまた新しい踊りもあるからさ」などとちょっと恥ずかしげに答えるおばさん。

「好っきだねええ!あんまり無理しないでよ?痛くなったら来てよ?」と送り出す先生の声を聞きながら踊りに夢中な人がこんなにも身近にいたのだな、と驚く。
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だがしかし、驚きはそれだけではないのだ。

夕方自治会長かどなたかのご挨拶がキーンというマイク音と共に近所に響きわたり、盆踊りが盛大に始まる。
しかしそれはもはや私の知っていた盆踊りではないのだ。東京音頭、地元の音頭、アラレちゃん音頭、ドラえもん音頭、炭坑節が鉄板かと思っていたがそんなのは古すぎた。
地元の音頭(歌は鳥羽一郎。近所に住んでいるので)、炭坑節、WAになっておどろう、そしてなんか知らんラテン音楽

Boney M - Bahama Mama
Bahama Mama!という曲らしく、「バハマ音頭」という名で神奈川県藤沢市の盆踊りで踊られているものらしい。この曲は確か去年もかかっていた。
明るい曲なのに、暗がりに揺れる提灯の向こうから響いてくると、なにやら物悲しくも聞こえてくる。コパカバーナ的な。
また、来年はオリンピックなのだなあ、としみじみ思い出させる東京五輪音頭。

東京五輪音頭-2020- の踊り方 ~ゆうゆう踊ろう~ / How to dance TOKYO GORIN ONDO 2020 (basic tempo)
うちの母親は子供の頃、祖母の影響でしょっちゅう三波春夫を聞かされたらしく、子供の頃の鼻歌は大利根無情や東京五輪音頭だったらしい。
そんなわけで大人になってもおばはんになっても家の中で時折三波春夫を口ずさんでいたので、私も図らずも知っていた東京五輪音頭。オリンピックの顔と顔~♪。
すっかりリニューアルされてた。

何よりおどろいたのはこれだ。

荻野目洋子/ダンシング・ヒーロー(Eat You Up) MV [New Dance Ver.] (Short Ver.)
荻野目洋子のダンシング・ヒーロー
ちょっと前に大阪の登美丘高校ダンス部が踊って話題になったのは知っていたけれど、盆踊りにまで進出しているとは思わなかった。
正直、この曲はベストテンや夜のヒットスタジオでリアルタイムで見ていた世代だ。
まさかまさかまさか、それが30年の時を経て、和太鼓のビートに乗せて盆踊り会場で流れるとはね・・・。
会場の司会は地元の中学生らしい女の子たちで「お母さん方も張り切って踊ってください」などと棒読みで煽ってくる。
ああ、ああ、こりゃああの整骨院にいた踊り子おばはんも、腰やられるわな・・。
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Wikipediaによると、「盆踊りとは、盆の時期に死者を供養するための行事、またその行事内で行なわれる踊り」のことだ。
死者に供養ったってね。生きている私だって驚いたのだ。お盆に帰ってきたご先祖様なんて何が起きたかわからないくらいだったんじゃなかろうか。ラテン音楽やら荻野目洋子やらが流れているんだもの。

そんなわけでエンドレスリピートされる衝撃のラインナップのおかげで、祭りから一夜明けた今日も会社にいてさえ、頭の中に延々と盆踊りメドレーが流れていた。
エア盆踊りだ。祭りはまだ終わっちゃいない、私の頭の中で。
踊り子のおばさんは完全燃焼できただろうか。真っ白に燃え尽きたろうか。そして今日は整骨に行ったのであろうか。
見知らぬ踊り子のおばはんのことまで気にかかる、これが祭りの威力。夏の魔力。