パンがなければ
パンがなければお菓子を食べればいいのに…とはフランス王妃マリー・アントワネットの発言である、と習ったような気がするし、それが「ベルサイユのばら」に描いてあったように思い込んでいた。
だが「ベルサイユのばら」にそんな描写はなかったし、そもそもあれは別にマリー・アントワネットの発言でも、高慢ちきな意味合いの発言でもなくて、二等小麦粉を使った安い菓子パンにしたらいいじゃん、という内容だったとの事です。
デュ・バリー夫人との対立は史実で、声掛け問題もちゃんとあったらしい。
さて、そんなベルサイユ宮殿のことなど全くもって無関係な日本の庶民である私は、恐らくベルサイユ宮殿のトイレにも満たない大きさの家に二匹の侍従(猫)と暮らしている。いや、侍従は私かもしれないが。
春はキャベツが安いので、この時期は大体家にキャベツがある。夜中にトイレに起きた際、テーブルの上のキャベツを猫と間違えてうっかり撫でようとするくらいにキャベツはある。
コールスローやら、煮びたし、お味噌汁、炒め物、スープ、焼きそば…だんだん飽きてきたときにハタ!と気が付く。お好み焼き作ればいいんじゃない?
キャベツがあるならお好み焼きを食べればいいじゃない!!
が、実は私、あまりお好み焼きに馴染みがない。実家でもあまりお好み焼きを作らなかったし、お好み焼き屋さんに行ったことはあるけれど、全部焼いてもらうタイプ。あとはお祭りで食べたくらい。
そんなわけで、初心者に優しいお好み焼き粉セットを買ってきた。
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いやいや半玉は多すぎじゃなーい?と思いながら1/4玉刻んで量を測ったら全然足りない。なんと!指示通り300gのキャベツはやはり半玉で、ボウルに山盛りだ。
…え、お好み焼きたった2枚でこんなにキャベツ使うの?えええ!おまけに卵も2個も?
お好み焼きという食べ物は、広島の戦後復興を支えたという話を聞いたこともあるし、ずっとエコノミーな庶民の味方だと思っていた。お祭りの屋台で500円で売られているのはお祭り用のボッタクリ価格なのだと思っていた。昔何かの一人暮らし貧乏自炊マンガで、お金がないからお好み焼き、というエピソードを読んだような気もする。
だが、今、お好み焼きを作りながら私はまるでケーキを作るときのように震えている。
ケーキを作るときのあの、「え、バターをこんなに!」「砂糖こんなに使うなんてダメじゃない…?」「なんですって!卵黄を2個も!?」みたいなあの恐怖感…。
なんだよ、お好み焼き、お前貴族の食べ物だったのか。ベルサイユ御用達か。
今回はお好み焼き粉セットを使ったからいいものの、律義に山芋だの小エビ、紅ショウガなんかまで揃えたら一体材料費はどこまで跳ね上がるのか…、ただでさえ豚肉やらネギやら天かすやらも必要なのだ。
怖い…お好み焼き、怖い。庶民の味方みたいな顔して思い切りブルジョア階級の食べ物だったの怖い…。謀ったな、お好み焼き!裏切ったな、お好み焼き!
焼きあがった後には、ソースじゃばじゃば、マヨネーズじゃばじゃば、かつおぶしどっさり、青のり、七味…という、まるでケーキのデコレーションのような工程も待っている。
屋台のお好み焼きなんか全然ボッタクリじゃなかった。お好み焼き屋さんで1枚800円以上するのも当たり前だった…。
おおお、お好み焼き…。
パンがなければお菓子を食べればいいのに、は決して高慢な発言ではなかったが、お好み焼きに裏切られた私は高慢な顔で言いたい。
「お好み…焼きは、たくさんの材料が必要ですこと…!」
「パンがなければお好み焼きを食べればいいのに!」
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