いいひと

大相撲11月場所は大関貴景勝の優勝。おめでとう。


去年の春頃、NHKの「スポーツ×ヒューマン」というドキュメンタリーで大関昇進が決まったばかりの貴景勝の特集を見て驚いたことがある。
タクシーに乗り込む貴景勝に友人からLINEがどんどん来るのだけど、友人たちは皆大学生で、普通にわいわい遊んでいる様子だった。
大きな体でやたらめったら貫禄があって、むっつりしていて感情をあまり表に出さない、口下手な昭和のベテランみたいな風格の貴景勝、この子、まだ22歳の若者なんだな、と改めて思ったのだ。
f:id:mame90:20201123094456j:plain
普通の子だったら、就職活動やら恋やらで泣いたり笑ったりしている中、この人は「ナメられたら終わり」な世界で大関の貫禄出して生きてるんだな、としみじみ感動した。
しかも部屋の問題や、ご両親についてメディアに好き放題言われる中で。
ハンカチ王子の時にも思ったけれど、若いうちからあれだけメディアにおもちゃにされて好き勝手なことを言われ、付け回され、写真を取られ、その上結果を求められ、そんな中で精神を病まずに生きているなんて、それだけでも敬服する。

f:id:mame90:20200816124820j:plain:w400
我が家の大関

先日、麻雀教室でスポーツ選手の不祥事の話をあれこれ振られ、「私はアスリートに人間性は求めていません」と言ったら笑われた。
でも、アスリートってある特定の競技に能力が特化しているからバランスの悪い部分があるのは当然だと私は思うのです。
その人に「ファンサービス」とか「人間性」とか「常識」まで求める必要あるのかな。
もちろん応援している選手がファンサービスもメディア対応も神で人間性最高だったら素晴らしいとは思うけど、必須条件ではないのでは?と。
f:id:mame90:20160813090907j:plain
さて、これは4年前、仙台場所の琴恵光。
この時はまだ名前も知らなくて声もかけられず、「キャー♡あのイケメン力士誰、素敵!!」とトキめいて密かにファンになった。
そこからずっと応援していて、先場所くらいから力強さが目立つようになり、今場所も序盤は本当に素晴らしかったのだけど、中盤から連敗続きで負け越してしまった。

応援しているから余計なんだけども、どうしてもここ一番であっさり負けてしまうように見える。十両で優勝争いに絡んだときだって、あっさり身を引いてしまったし、「お、ここから勢いつけてどんどん番付あがってくるかな」と思っても、上がったり落ちたりだし、真面目で人が良いんだけど、どうも強くなりきれない感じというか。
その話を以前に、相撲友達で栃煌山大好きなつるちゃんにしたら、激しく同意された。
「そうなんだよ、栃煌山もさ、いい人で真面目すぎるんだよね。立合いも絶対変化しないし。けどそれでイマイチ上にあがれない」

f:id:mame90:20170517132722j:plain
引退後はニコニコ笑顔の多い栃煌山

プロ野球の解説でもしょっちゅうピッチャーが「彼は優しすぎるところがありますからね」なんて言われてたりする。
勝負の世界だと「優しい人」「いい人」だけじゃダメなんだよな。特にピッチャーはそれではダメな気がしていたが、お相撲さんももちろんそうだよな。
…というかアスリートはそうだし、アスリートにかぎらず「競争社会で生きていく」ってそういうことだよな、と思う。
「真面目に生きてきたから」「実直な人間だから」成功するわけではない。真面目に生きてきた人間がバカを見る、というのも正直当たり前のことだと思う。
動物の世界だってそうだろう。

f:id:mame90:20170602192425j:plain
相当畜生な鳥。

今年の大相撲、毎場所優勝力士が違い、幕尻からの優勝があり、怪我からの復活優勝があり、大関昇進をかけた優勝があった。
そんなドラマの中で、貴景勝は「壁」として存在していたし、悪役のように扱われたりもした。コロナ禍のリモート取材に応じないからとメディアに叩かれていたこともあった。
でも、悪役になれるって「強さ」だよなと思う。
正直今場所の優勝決定戦、照ノ富士を応援していたけど、勝ったあとの貴景勝の表情と優勝インタビューにグっときた。立派だった。
f:id:mame90:20200113165301j:plain
だからねー、あのー、琴恵光。
いい人なところ、真面目なところも好きだけど、いいひとじゃなくてもいいよ。無愛想でもファンサービスしなくても、コメントがぶっきらぼうでも全然いいよ。ぶっちゃけ隠し子がいようが、二股恋愛してようが構わないんだぜ。
どんどん勝って、三役に上がるの楽しみにしてるからな!