ライスカレー
随分昔の春先、バス停で高校生男子がカレー屋の話をしていた。
「壱番屋がさァ…」
「は?ココ壱だろ?壱番屋ってなんだよ!ココ壱って言うの知んねェの?ダッセェ」
横で聞いてた私もそれで「なるほど、あの店はココ壱と言うのか」と学んだものだ。
ココ壱と言うは易く、行くは難し。
大体ああいうお店は女一人では何となく入りづらいし、何よりあの自動扉の向こうにはどんなシステムの世界が広がっているのやら。
けれど、年に一度くらい「カレーにビール!」という益荒男振りを発揮してみたくなる日もあるもので、先日「カツカレー!今日は絶対カツカレーと生ビール!!」と会社帰りに鼻息荒く決意したものの、どこで食べたらいいのやら途方に暮れる。
職場はカレーの聖地神保町だが、初心者にはハードルが高い、ような気がする。
「ココ壱」も近くにないし、あった所で新しい世界に飛び込む勇気もなく。
老若男女、安心してカツカレーが食べれる店はどこだ、そうだ、ファミレスだ、別にグルメ気取りでもないしね。…というわけでガスト。
そう言えば、外で食べるカレーにはじゃが芋や人参なんかの具が入らないようになったのはいつ頃からなんだろう。
私が子供の頃はカレーと言えば人参、じゃが芋がゴロゴロとしていたものだ。
そんな話を前に職場の先輩と社員食堂でしたっけ。
「私は具がないカレーの方が好きなのよね。具が全部溶け込んでるようなやつ」
と先輩は言ったが、疑り深く貧乏性の私は「本当に全部具が溶けたのか、最初から入っていないのではないか」と考えてしまうし、損をしたような気になるので具がある方が好きだと言った。
でも外で食べるとやっぱ具はないものね。特にカツカレーやら、コロッケカレーやら、トッピングをするようなカレーは。
カレーつついてそんな事考えるたびに行き着くのは倉本聰のドラマ「ライスカレー」
ライスカレーっていうのはな、こんなえらそうな生意気なカレーとは違うんだよ!
最初からメシの上にカレーがダラーーーーーーーーっとかかってて
ラッキョと福神漬がついてて、
スプーンが水のコップの中に突っ立ってでてきて
人参やじゃがいもがゴテゴテ入ってて、
グリンピースが3つ、上にある。
必ずそれは3つだ。
これは決まりだ。
それでしばらく放っておくと上に膜がすーーーーーーーーっとかかる
毎回思い出すと見たくなる。そしてそんなライスカレーがCSで再放送していたというのに、気がついたのは最終回放送日の今日だよ!なんだよ、もっと大々的に言ってくれよ!
別にグリンピースが3つ入ってなくてもいい。スプーンが水のコップの中に突っ立ってなくてもいい。
でも人参やじゃがいもはゴロゴロしてるといい。豚バラなんかもヒラヒラしてたらいい。
そんなショボいカレーで良いくらい、私の夢はささやかなのですが、
どうぞ「ライスカレー」がまた再放送されますように。お願いします。
君拾帖
博物館のミュージアムショップが好きで、ああいう所に行くと、ついつい何か買ってしまう。中でも書籍で、その博物館ごとの展示内容等に特化されていたりするので、普通の本屋やAmazonなんかだったらスルーなのに、妙な胸のトキめきと共に購入してしまうのだ。
東京大学の学術遺産 君拾帖<東京大学の学術遺産 君拾帖> (メディアファクトリー新書)
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この本もそれで、国立科学博物館のミュージアムショップで買ってきた。幕末から明治・大正を生きた博物館の祖、田中芳男のスクラップ帳の抜粋だ。
缶詰のラベルやら、弁当の包み紙、船や汽車の切符がぎっしり貼り付けられていてとても面白い。
昔からお客様は神様らしく、制服の広告には「子供衆方の体操なすに至極便利且つ安直にして洗濯もききますし、持ちも中々宜しい」、駅弁の広告には「当駅に於いてお買上げの物品若し貴意に叶わさる時は次駅に於いて物品交換又は代金弁償仕候也」と、ご丁寧なことなのに、この時代の新聞は結構ぞんざいだ。
明治24年3月2日の読売新聞号外はこうだ、
「本日衆議院に於いて予算案特別委員は政府との談判を報告して曰く結局政府は経常臨時会計の上にて六百三十一萬二千一圓七十八銭八厘の外削減する能わずと言い放ちたるより特別委員は己を得ず不満足ながらも政府の要求額と折り合いをつけ」
すごい攻めてる。
そう言えば以前に江戸東京博物館で見た、関東大震災後の関東戒厳司令部の注意書きも結構攻めていた。
「自動車は全力を挙げて罹災民の救護、食料、飲用水等の運搬のために働いているのだから其の仕事を邪魔しないように」
まあ、当然と言えば当然の注意事項ではあるけれど最近こういう厳しめの文章を見かけないような気がする。
最近じゃ世の中に何かにつけて文句をつけるうるさい人が多いので、お役所の注意書きにしろ何にしろ、何もかもが至れりつくせりになってきているけれど、これくらい厳しくてもいいような気がする。
厳しいっていうか、じわじわくるもんな、こういうの。
じわじわ来るぶん、印象にだって強く残るしな。