君拾帖

■くんしゅうちょう■  すきなことだけてきとうに

扉の向こう側

昨今では宅配便を装った殺人事件などが起こる物騒な世の中なので、簡単にドアを開けてはいけないなんてよく言われるんだけど、ドアチャイムが鳴るとついうっかりインターホンも使わずにハイハイとドアを開けてしまう。ビールなんか飲んで上機嫌なら尚更だ。
そんな訳で、3月の終わり、新聞屋につかまった。朝日新聞

完全保存版 高校野球100年

完全保存版 高校野球100年

高校野球ファンなもので、朝日新聞には分が悪い。
「今センバツ開催中なんですけど、これはうちと毎日新聞の共催なんですよー」
…知ってる。
「夏はウチの単独主催で、今年は100回記念大会なんです。」
…もちろん知ってる。
「3ヶ月だけでもいいので購読してくれませんか。紙面も野球に力をいれていきます。購読して頂くと、その分何割か、神奈川の野球部にボールを寄贈したりすることにもつながるんです」
…くっそーーーー…。そんなこと言われたら、ぐらっとくるじゃんか。
ダメ押しに、人体展と山種美術館ベイスターズのチケットくれたので、もうしょうがない。3ヶ月購読することになった。そうして届く新聞を読んで、あれこれ度肝を抜かれる。
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まず、折込チラシの中にまぎれる「定年時代」という地域情報誌。なんてタイトルだよ!!
地元の老人たちが老いてなおイキイキと過ごす様などが書かれている。「封印されたヨーデルの復活」とか。
…なんなの…?
折込チラシも墓だの介護だの。新聞紙面の広告もヤバい。
「自分の力で歩く!!本当に信じられるサプリを見極められるか!!上り下りも自分らしく。90才、ジョギング大会が楽しみ!」
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すごい迫力で薦められるオオイタドリサプリ。
その他、セサミン、コンドロイチン、キューピーコーワゴールド、ハズキルーペ。
また、朝日新聞の「4月から紙面を刷新する」旨のお知らせ欄には「若い人の声もたくさん!」などと書かれ、投書欄には「僕は13才です」だの年齢アピールから始まる、ちょっとイヤらしく狙った感のある「若者の主張」が連日並ぶ。
あまりのことに目眩を覚えつつ、しみじみ実感した。
「今、新聞読んでるのって本当に高齢者だけなんだな…。読者層に応えようとするとこうなるんだな…」
まるで老人ホームの扉をあけたような気持ち…。

細面歴写送後詳細

小さな求人欄にはこんな暗号も並ぶ。
大昔、祖母が言っていた。
「おばあちゃんね、若い頃、仕事探そうと思ったんだけど、何見ても「細面」って書いてあるからね、細面じゃないとダメかしらって鏡を見てずっと悩んでいたの。でもあれ「委細面談」の略だった!」
祖母からあの話を聞いていなかったら私は上記の暗号を解読できなかったことであろう。
祖母の若い頃から今にかけて、変わらぬものがこの新聞の紙面にあるのだな。「紙面の都合上」「紙幅の都合上」っていう言葉が、今尚リアルに存在するのだな、ここには。
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もう、驚きを通り越して、不思議な気持になってくる。なんだか生きている世界が全然違うみたい。パラレルワールドみたい。ニュースやネット記事とはまた少し違う角度のアプローチや書き方なので、書かれていることが本当に今の世の中のことなのかどうなのかもわからなくなってくる。

山極寿一×鎌田浩毅 ゴリラと学ぶ:家族の起源と人類の未来 (MINERVA知の白熱講義)

山極寿一×鎌田浩毅 ゴリラと学ぶ:家族の起源と人類の未来 (MINERVA知の白熱講義)

そんな中、一番楽しみにしているのは紙面の下にある、本の宣伝ページだ。世の中にはこんな奇妙な本があるのか、と驚くような本の紹介がたくさんある。こればかりは「新聞でしか知ることのできない情報」のような気がする。キャッチコピーがたまらなく面白い。
「霊長類学の第一人者にして京大総長、異色の火山学者と大激談 『ゴリラと学ぶ』」
すごい。なぜ火山学者とゴリラの話をするのか。もう読みたくてたまらない。
歎異抄をひらく

歎異抄をひらく

「なぜ、無人島に一冊もってゆくなら歎異抄なのか。何が、心の支えになるのか」屎尿・下水研究会なんて会がこの世にあるとは知らなかった…。非常に興味をそそられる。
家主と地主 2018年 05 月号 [雑誌]

家主と地主 2018年 05 月号 [雑誌]

「家主と地主」
こんなドストレートなタイトルの月刊誌が世の中に出回っていたことも知らなかった。

扉をあけると新聞屋がいた。そして新聞という扉の向こうには老後の世界が広がっていた。マニアックな本の世界も広がっていた。もはや指を舐めなければページがめくれないという、我が身の老いも教えてくれた。
いやあ、勉強になるなあ…。でも3ヶ月でいいや、ホント。
この扉の向こうはまだ早い気がする…。