冷徹と情熱の間

弟の娘はおそらくそろそろ3歳になるのだと思うが、生まれてから1度しか会ったことがない。
まだ座布団の上で寝るくらい小さかった頃だ。そっと足に触れて「ふにゃふにゃかと思いきや、赤子というのは割りとみっちりと肉がつまっているものなのだな」と驚いた。「抱いてあげてください」ってお嫁さんに言われたけど、子どもを持ったことのない者にとって、「赤子は最大級の壊れ物」という思いが強く、恐ろしくてとてもじゃないけど抱き上げることなどできなかった。

実は特に「可愛い」だとか「姪っ子ちゃん♡」という気持にもなれなくて、自分はひどく冷たい人間なのかと友人たちに話したら、「まあまだ赤子のうちはね。喋りだすとすごく可愛いよ」とみんな仰る。今思えばあれは相当気を遣ってくれていたのだろう。みんな姪っ子や甥っ子の写真を待ち受けにしていたり、毎日電話していたり、甥姪の運動会に応援に行ったりしてるもの。

姪っ子に、全く何の興味もない。そればかりか、いつか再会する日を恐れてさえいる。あの頃と違ってもう口も聞けるようになっているはず。何を話せばいいの…?伯母ってどうしたらいいの。
自分でも冷たいと思ってる。昔はその自分の冷たさを申し訳なくも思ったけれど、40過ぎると図々しいもので「しょうがないじゃん、もう変わらない」と開き直っている。

それなのに、コアラの成長はやたら気にかけている。家族でもないのに。コアラでもないのに。孫に夢中なお婆さんの心境で片道2時間半の道のりをせっせと埼玉まで通い、ストーカーのように見つめる。

10月。なんだか最近寝てばっかりだし、心なしかお腹が大きいような気がするけど、冬に向けて脂肪でも貯めるのかもしれないし、と思っていた。

11月。太ったなあ、ジンベラン。ていうか、やっぱりお腹、大きい気がするんだけど・・・。

12月。あ、やっぱ赤ちゃんか!赤ちゃんがもうとっくに生まれてて、お腹のポッケの中で生きてるのね?そうだよね、あれは絶対。
そんな風に、ずーーーーーーーーっと気にかけていた。コアラのことは。

お正月も家族で集まりもしなかったし、姪っ子にお年玉なんて思いもしなかったのに、コアラにお年玉やらなきゃ!と(コアラ基金への募金なのだけど)いそいそと正月2日も動物園に出かける。

1月13日にはついに赤ちゃんに会えた。嬉しさのあまり、無事に成長することを願って神社にお参りまでした。

母と子の姿におおお、といっちょ前に暖かい気持ちにもなるし、生き物や命ってすごいなとだって思う。

私がコアラじゃないから、コアラがしゃべらないから、ガラスの向こうにいるから、近づけないから、触れないから、いくらでも優しさを注げるのかもしれない。
しょうがない、と開き直り切ることもできずに、自分の冷たさ、子どもっぽさを少しばかり心苦しく思っていた矢先、しいたけ占いのこんな記事を見つけて「その通り過ぎる」と驚愕した。
昨今、女子に大人気のしいたけ占い。きのこに惹かれる性質上、しいたけというその名に呼び寄せられ、2年ほど前から割りと心の支えにしている。
蟹座の私。しいたけさん曰く
「恋人とか身内に対しては若干厳しい態度をとって、その分アイドルとか猫を「むひょー」とかわいがる」
「「キャー!」って「かわいい!」と思えるものには絶対服従をする」
「しつこいけど身内には厳しい」

なーんだ良かった、蟹座だからか。身内に冷たくてコアラに絶対服従なの、蟹座あるあるか。あーよかった。
…星占いなんてバカバカしいって言う人もいるだろうけど、心が楽になるようなこと言ってくれたらそれを支えにしたいじゃない。
姪っ子よ、あなたがコアラ好きな女の子に育つなら、いつかきっと私達楽しくお話できる日が来るかもしれないわ。