君拾帖

博物館のミュージアムショップが好きで、ああいう所に行くと、ついつい何か買ってしまう。中でも書籍で、その博物館ごとの展示内容等に特化されていたりするので、普通の本屋やAmazonなんかだったらスルーなのに、妙な胸のトキめきと共に購入してしまうのだ。

この本もそれで、国立科学博物館ミュージアムショップで買ってきた。幕末から明治・大正を生きた博物館の祖、田中芳男のスクラップ帳の抜粋だ。
缶詰のラベルやら、弁当の包み紙、船や汽車の切符がぎっしり貼り付けられていてとても面白い。

昔からお客様は神様らしく、制服の広告には「子供衆方の体操なすに至極便利且つ安直にして洗濯もききますし、持ちも中々宜しい」、駅弁の広告には「当駅に於いてお買上げの物品若し貴意に叶わさる時は次駅に於いて物品交換又は代金弁償仕候也」と、ご丁寧なことなのに、この時代の新聞は結構ぞんざいだ。

明治24年3月2日の読売新聞号外はこうだ、
「本日衆議院に於いて予算案特別委員は政府との談判を報告して曰く結局政府は経常臨時会計の上にて六百三十一萬二千一圓七十八銭八厘の外削減する能わずと言い放ちたるより特別委員は己を得ず不満足ながらも政府の要求額と折り合いをつけ」

すごい攻めてる。

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そう言えば以前に江戸東京博物館で見た、関東大震災後の関東戒厳司令部の注意書きも結構攻めていた。
「自動車は全力を挙げて罹災民の救護、食料、飲用水等の運搬のために働いているのだから其の仕事を邪魔しないように」
まあ、当然と言えば当然の注意事項ではあるけれど最近こういう厳しめの文章を見かけないような気がする。

最近じゃ世の中に何かにつけて文句をつけるうるさい人が多いので、お役所の注意書きにしろ何にしろ、何もかもが至れりつくせりになってきているけれど、これくらい厳しくてもいいような気がする。
厳しいっていうか、じわじわくるもんな、こういうの。
じわじわ来るぶん、印象にだって強く残るしな。