本当にひとり立ちしたい人は、何かを育てるといいのよね。子供とかさ、鉢植えとかね。そうすると、自分の限界がわかるのよ。そこからが始まりなのよ。

キッチン (角川文庫)

キッチン (角川文庫)

吉本ばななが23歳で書いた「キッチン」という小説にはこんな一節がある。私が初めて読んだのは19歳の時。まだ親元暮らしだったし、「ふーん、そうなのかあ、そうやって大人になるんだなあ」と憧れすら抱いたもんだった。
あれから何十年もたって、令和になって。吉本ばななの言う「本当にひとり立ち」がどれくらいの意味かは分からないけど、猫に逃げられたり何度も植物を枯らしながらひとり立ちしてきた。
また猫を飼い始めて、ふとあの文章を思い出すと、「限界」かしら、「限界を知ったかしら」と考えてしまう。
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いや、限界を知る、と言うよりも、何かを本気で育ててみて知ることは「腹をくくるしかない」ってことなのではないか、と私は思う。
猫と暮らし始めて半年。ようやく「もうしょうがない。腹くくるしかない」という境地に至った。
これまで、うんこがどうの、おしっこがどうの、と悩みを書いてきたが、いちばん心を占めていたのは「猫がデカい」ということだった。
ともかくどんどんデカくなるのだ。朝会社に行って、帰宅するとひとまわり大きくなっている。まるで「千と千尋の神隠し」のカオナシみたい。
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「ひい!また大きくなってる!」 そんな毎日だった。
下の表はペットフードのパッケージに記載されている1歳までの子猫の給餌目安量だ。
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うちの人たちは16週で2.6kg、24週で3.9kgあった。
仕方ないので、体重に合わせてご飯の量を決めていたが、パッケージによると3.5kgからは量を減らすことになっている。
しかも成長が早かったせいで20週で去勢している。去勢後は太りやすいから気をつけろ!だの、1歳になるまでは成長期だからご飯はどんどんあげろ!だのといろんな情報が錯綜する中で、どうすればいいのかずっと悶々としていた。
病院で先生に「ご飯の量って…」と聞いてみても「ああ、うん、太ってないから平気」とサラっとかわされる。
この時期、私は本当に答えが欲しかった。何を見ても書いてある「個体差があります」という一文に憤りさえした。
個体差があるのなんかわかってんだよ!!だからどうしろって言うのよ!

体は「子猫」とは呼べないほどデカい。しかし中身はまだ全然子供、というギャップに戸惑ったりもする。
公園で出会ったトイプードルや友人の家のマルチーズよりも大きくて、犬よりデカいのか…と衝撃を受ける。
どこまでデカくなるのか、そのうち土佐犬みたいになるんじゃないか、と不安に駆られたりもする。
よその子猫を見て「わー、小さい!2か月くらいですか?」と話しかけたら「4か月です」と言われてヘコんだり。
…大きいことはいいことだし、健康に大きく育ってくれてありがたい。ありがたいけれども、もしかしたらよその家ではもっと、あどけない子猫時代を長く楽しめているんじゃないのかしら。うちはもう子猫なんて呼べない体格になってしまったのに…、と他所と比べてしまったり。

かつてはこんなに小さかったのに…

病院の先生から「太っていない」とのお墨付きは頂いたがともかく胴が太く逞しい。胸郭もすごい。尻もデカい。
一昔前なら健康優良児だろう。明大中野八王子から相撲部屋に入るタイプ。そんなワケでよく食べる。正直、給餌量目安の2倍は食べていると思う。
「肥満は万病のもとです」「猫を太らせないことが飼い主の責任です!」などと、どこにもそこにも書いてある世の中で、責められているような気持にもなった。
これが自分の事だったら別にいいのだ。食べ過ぎたら太る、太ったら何か対策考えればいい、病気になったらしょうがない、でも「違う生き物の成長に対して責任を持たなければいけない」から…。
おろおろクヨクヨ、うだうだ延々考えたけど、もう考えるのやめた。やめやめ。

腹の立つようなイタズラもする、腹が減ったと大騒ぎもする、そしてたくましい腹をもつ、そんな彼らが太り始めたらまた考えればいいし、毎日毎日様子見ながらご飯の量も考えていくしかない。そしてどんどんデカくなればいいさ。8kgの雄猫なんかもいるみたいだものね。大きくなれよ!と腹をくくる。
腹を決めた私は5月から筋トレを開始した。
だって、これからも更に大きくなり続ける猫を2匹もかついで病院に連れて行ったり、抱っこしたりして生きていかねばならないのだもの。
腹をくくり、腹を決め、腹を鍛え、腹をすかせた猫にご飯食べさせる。

尚、猫はもう5kgを超えたことをここにご報告いたします。