人間的な、あまりに人間的な

年末に上海に行ってきた。
休みがあるからどこか行こう、飛行機に長時間乗るのは嫌だから近場にしよう、台湾は「パワースポットで恋力アップ!」みたいな女子が多そうだから避けよう…と思っていた矢先に江蘇省の観光サイトを見かけ
蘇州!蘇州夜曲!上海から近いのか!と上海・蘇州に決定した。
昨今中国は経済の成長著しく、まあ、私などの目に入る光景と言えばSNSで見かけるキラキラの夜景や近代都市の風景や、旅行雑誌の可愛らしいシノワズリ雑貨やら、上記の観光サイトのお美しい光景で、「華やかな都会への旅行」だと思ってた、私。

利根川と海の眩しい青空の国から3時間

雨のそぼ降る茶色い国、中国へ。茶色いなあ。これが大陸の川か。
シャレオツな空港を出て、客引きの怒声をかいくぐって長距離バスに乗り、蘇州へ。これがまた恐ろしく渋滞して隣のおばはんがキレる。私に同意を求めているようだが、中国語がわからないので「Sorry」とか言うと、「お前じゃ話にならない」とばかりに席を移動される。

すっかり暗くなった窓の外に燦然と輝くプロパガンダらしきもの。
宿泊した蘇州の安宿は、なぜか夜毎に誰かがドアの隙間からエロの斡旋広告を差し込んでくる。あまりの衝撃に写真に収めたが、写真フォルダを見るたびに動揺するので消した。…私が日本人と知って、奴らは体操着ブルマの写真を差し込んでくるのか。…だとすれば私が女に見えなかったか。それとも中国でもエロのニーズは体操着ブルマなのか…。

中国にもファミリーマートがあって、入店チャイムも同じ音なので、ものすごくホッとする。が、驚くべきはレジ前にバン!とコンドームが置かれていること。そればかりか!堂々と大人のおもちゃが置かれていること。驚きのあまり二度見。おしゃれなパッケージしてたって、それはそれ。
なに?一人っ子政策終わったから?そんなに張り切る?

朝ごはんを食べたこの食堂の壁には政府からと思われる「みんな腹八分目にしようね、食べ物も無駄になるし、健康にも悪いよ」的な事が書かれたポスターが貼ってあって、「こんだけ人口が多いと、食べ物が足りなくなるよなあ、大変だ」としみじみしたのだが、コンビニのあの様子じゃ、更にどんどん人口増えちゃうのでは。いや、だからこそ、あんなに大々的にコンドームを売っているのか…。

さて、ここにも書いたけれど、他所様の洗濯物がやたらと気にかかる下世話な性分です。ええ、中国においてさえ。いや、むしろ中国だからこそ。あの方々の大胆不敵さ…。

遠くから恐る恐る撮る、ハンガーに履かされた赤いパンツ。衝撃的だった。

また別の地の赤パンツ。そうか、中国ではパンツはハンガーに履かせて干すのか。赤パンツはメジャーなのか。雨でも洗濯物は干すのか。もう驚かない。

翌朝上海へ。上海は都会だから大丈夫、と思いきやそうでもない。この国の人達はきっと洗濯が大好きなんだろう。ホテルから工事現場の宿舎が見えたが、朝、工事現場のおじさんたちはみんな洗濯物を干していた。だがしかし、なぜ、その辺の電柱にも干してしまうのか。

旅行雑誌に必ず載る、上海で訪れるべき必須ポイント外灘の朝。スモッグで空が茶色く、太陽の形がはっきり見える。これが黄砂なのか大気汚染なのかは何なのかは知らないが、あまり洗濯物を干すにいい環境とは思えない。

だがそれで怯むような彼らではないのだ。高層マンションだってこの通り。高層階でも外に干す。風で飛ばないのか心配になる。

この、各戸に取り付けられた、店のアーケード用みたいな長い棒。これが備え付けの物干し竿なのだろうか。どうやって取り込むのかも気になる。

お店の路地裏も、見上げればそこに洗濯物。
なんという逞しさ、人間らしさ。そうね、生きるって食べて生殖して洗濯する日々だよね。
どこの誰だよ、「食べて、祈って、恋をして」とかぬるいこと言ってるやつは。
どこの誰だよ、夜景見て蟹食べてお買い物してオシャレー!みたいな観光ガイド書いてるやつは!
中国、それはあまりに人間的な国。格差もしたたかさも、逞しさも優しさも、不器用さもぶっきらぼうさも、欲も洗濯物も。
良くも悪くも。