ままならない 2017夏/青春4日目

鹿鳴館 (新潮文庫)

鹿鳴館 (新潮文庫)

11月、秋の終わり、天長節が舞台のこの戯曲の中で、主人公朝子は切々と嘆く。
ああ、ままならないものでございますね。何というままならない…
澄んだ秋空を見ればこの戯曲が読みたくなるし、大仰な台詞回しで「なんっという、ままならない…っ」と言ってみたくもなる。

大正元年に造られたネオ・ルネサンス様式のJR日光駅駅舎
青春18きっぷでやってきた1泊2日の日光。寺に行けば「人生はままならないものだ」と諌められるし、まあ確かにあれこれままならない。

こういうスナックに、ふらっと入れるほど大人に成る日はいつ訪れるの?
まずもって、夕ご飯を食べるお店がなかったし、朝にかけて小雨が振る。なんでわざわざ1泊したかって、それは霧降高原をハイキングしたかったからだ。しかし、雨…。始発のバスは見送って、雨が止むのを待って出発。
そうそう、駅前のコンビニでお弁当を買おうと思っていたが、駅前にコンビニはなかった。…ままならねえ…。

霧降高原の一番ポピュラーなコースはこの斜面を階段で延々登る道。上に展望台もあるらしい。

しかし私は下るつもりで来た。下ると滝に出るはずなのだ。別にすごく滝が好きとか、見たいとかってわけじゃないけど、あったらつい寄るじゃない?滝。


というわけで大山ハイキングコースなのですが、この時点で若干想定外。
初夏に、私は課長の薦めで尾瀬に行って参りました。尾瀬はさすが有名な観光地だけあって、完全に整備された木道をひたすら歩く場所でした。登山靴を持っていく必要なんてなかった。
課長も後で言っていました。「失敗したよー、もっと軽装備で良かった。今度は荷物減らす」
…先に言ってよ!
そういう経験の下、私は日光霧降高原のハイキングコースをナメていた。有名な観光地のハイキングコースだもの、イヤってほど整備されているのでしょう。また尾瀬も行くし、とわざわざローカットのトレッキングシューズを買って、軽装備で出かけた私の前に広がるは箱根の如き藪。あらやだ、ゲイター持ってこなかったじゃない…。ままならないものでございますね。

それでもいつかは藪をぬける、と思うでしょうが、藪、沢、藪。


牧場に出た!…と思ったって、この芝はぐしゃぐしゃに湿って、一足ごとに水が滲み出て来るんだぜ。

おかげさまでおろしたての靴はこの惨状。ぼ、防水スプレーしてあるから…汚れだってはじくんだから…(震え声

やだ、北海道みたいじゃない!…とかキュンとしてみるが、実は北海道に行ったことはない。

想定外に晴れるもまだまだ湿った藪を行く。

そして怒涛の滝ラッシュが始まる。

ちょっと遠回りすれば滝があるよ!あっちも滝だよ、こっちも滝だよ。

なんだかもう、だんだん滝はどうでも良くなってくるのだ。滝、おなかいっぱいだよ。僕もう疲れたよ。

そうして。
一番メインの、有名所の、目標としていた霧降の滝は見ず、丁度来たバスに乗ってしまう。
ままならないわねえ。
しかし思い返してみれば、私はいつもどこかに行くたびに「ままならない」「想定外」「こいつはびっくり」「なんたること」とままならなさを嘆いたり笑ったりしているし、結局のところ、そうしたくてどこかへ出かけているんだろうとも思う。
と、総括したところで最後にもう一度輪王寺の教え。

昼過ぎのJR日光→宇都宮→渋谷で夕方帰宅。泥まみれの靴で乗る都会の電車の恥ずかしさよ。
ああ、ままならないものでございますね。何というままならない…。