曲がり角ごとの驚きXV あの場所
ちょっと前から電車の液晶広告で「ダムパシャ」というのを見かけるようになった。
カメラ女子が八ッ場ダム建築現場で、“インスタ映え”みたいな写真を撮る、清水建設主催のイベントがあるらしい。
カメラ女子ブーム、大人の社会科見学ブーム、ダム萌え、ニッチな場所好きー、てな所を上手くつかんで、しかも場所はあの八ッ場ダム。事業仕分けやら脱ダム宣言やらの中、工事中止に見舞われた「あの」。
工事再開してたんだなあ。うまく宣伝するもんだなあとしみじみしていたら、お盆休みの旅行中、うっかりあの場所を通りかかる。
「なんであそこあんな混んでんの」
「やんば見放題だって」
「やんば?」
「やんばってアレじゃん?あの八ッ場ダム」
「ああ、あの!じゃあ寄ってくか」
こちらが水没する側。
元々は橋ももっと低くて、川沿いは温泉街で国道も鉄道も川沿いにあったけれど、すべてダムのために高地に移したらしい。
立ち並ぶセメントサイロ。
なんてことない国道に突然こんな、急ごしらえのような展望台と公園、仮設トイレ、遊具、うどん屋蕎麦屋が現れ人々が集う。それは誰もが「ああ、あの!」と思っているからだろう。
プレハブ作りの資料館の脇には工事に使う40トンダンプトラックのタイヤが無造作に置かれており、子どもが「デカーい!」と歓声をあげながら上に乗り、記念撮影をせがむ。
そして近くの道の駅に貼られたポスターにはこのように書いてある。
「数年前、ダム工事の是非で全国的に注目された“あの場所”」
はあ、上手くやるもんだなあ、全国的にあがった知名度を活かして、ただのダム建築現場なのに観光地だもんなあ、と思ったが、そう言えば黒部ダムがそんな観光地ダムの大先輩だ。
あれも関電トンネルの破砕帯のご苦労、黒部の太陽、裕次郎、プロジェクトX、中島みゆき、そんな訳で「あの黒部ダム」だ。
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でも、それが災害や事故や政治的問題で大きなニュースになったりすると、毎日ニュースを見続け、いろんな事情を少しづつ聞きかじる中、強烈に「あの場所」として刻まれていく。
そして人は「あの場所」を見てみたくなるものだ。
「If you build it, he will come.(それを造れば、彼は来る)」って言うけど、ただ作るだけじゃダメなんだな。途中で建設中止になったり、大変なご苦労や強い衝撃があったりしないと。
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結構ミーハーね。