傲慢とアイス
元気があればなんでもできる。
…そうですね、猪木さん。
*
節電とか電気使用量の集中を防ぐため、鉄道会社の混雑緩和対策…。おそらくお国と企業の苦肉の策の一環だと思うけど何年か前から朝活だのエクストリーム出社だのがもてはやされている。
朝活=デキる人、リア充みたいなイメージも着々と定着しつつある。こんな感じでいけばプレミアムフライデーもそのうち定着するのかしら。
かくいう私も年々出勤時間が早くなって、今や6時半の電車で通勤している。6時半を過ぎると駅前の駐輪場がいっぱいになってしまうし、早い時間の通勤に慣れると、もうギリギリの時間帯の満員電車には乗れなくなる。
始業は9時なのに、7時半には会社の最寄り駅についてしまうので、千鳥ヶ淵だの靖国神社だの散歩したりするが、「デキる人の朝活」、というよりは婆ちゃんの早朝散歩といった風情だ。靖国神社で戦没者の遺品見て朝から涙ぐんだりして。
そんな早朝散歩がてら、1週間分のおやつを買っていこうとセブンイレブンに立ち寄ったら、何やらくじびきキャンペーンをやっており、当たったんですよ。
井村屋のあずきバーの引換券。
しかもお店の人が真顔で言うのです。「今引き換えますか?」
…いえ、今はいいです。…朝7時半にあずきバーは無理。あれ、すっごく硬いし。
セブンを出て、しみじみと考え込む。
別に朝からアイスを食べたっていい。エクストリーム出社とか流行ってるんだし、アイスを食べるだけの時間がないわけでもない。まして今は夏。早朝アイスを食べるにはうってつけだ。北の丸公園のベンチに座り、朝日を浴びながらアイスを食べるのって素敵だと思う。
ただ、問題は、朝からあの硬いあずきバーに挑む気力が私にない、ということなのだ。
なんということでしょう。
「婆ちゃんの早朝散歩」なんて言いつつ、私は心の中でいやらしく「早起きして朝から活動的、元気ハツラツな私」と自惚れていたんだ。それなのに自分で思うほどには元気じゃなかったのか。あずきバーを敬遠するくらい。なんたる傲慢、なんたる過信。
硬いあずきバーで殴られたような衝撃だ。
あの引換券をもらったのは月曜日。
火曜日も水曜日も朝、出勤がてら自らに問いかけた。
「今日は朝からあずきバー食べれる?」
答えはいつもノーだ。いつか朝からあずきバーを食べれるほどに気力の充実した日が来るのだろうか。それとももう一生そんな日は来ないのか。そんな風に、つい先を憂えて陰鬱になりもする。
あずきバー、恐ろしい子…。
今日、帰りに自宅付近のセブンで引き換えてあずきバーをもらってきた。
硬いぞ硬いぞ、と覚悟して食べたらそれほど硬くもなかった。
だからってまた自分を過信して傲慢になって「朝からあずきバー、余裕でしょ」なんてトガったこと言えるもんか。
いろんな意味で大人のアイス。人を大人にするアイス、あずきバー。
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