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君拾帖

すきなことだけてきとうに

あばずれ

数年前、なぜだかクリームパンに凝りだして、あちこちのクリームパンを食べてはブログにあれこれ書いていた。
批評ってほどのものでもなく、ただただクリームパンにかこつけてつらつらと。

110ものクリームパンの記事。
110個のクリームパンを食べ続けてわかることは、世の中にはハズレのクリームパンの方が多いということだ。
まるでヤマト糊みたいに粘度が高くて味の薄いカスタードクリームや、やたらと香料の強いカスタード。クリームとパン生地のバランスが悪すぎるものもあれば、水でふやけたようなぐにゃぐにゃのパン生地もあった。

それでも、パン屋があればついふらふらと入ってはクリームパンを探し回っていたあの頃。
あまりに裏切られすぎて「もうクリームパンなんて信じない」と思ったり、「これもまたまずいんじゃないか」と怯えながらも義務感のようにクリームパンを手にとっていた。

そんな私がクリームパンを語るには、薄暗い飲み屋の片隅で煙草をふかす疲れた顔のあばずれみたいな風情がお似合いだ。
「いろんなクリームパンを見てきたのよね」
「次こそは、次こそはっていっつも期待しては裏切られてね」
「それでも毎回クリームパンに引っかかっちゃうんだから、あたしもバカな女だね」
「小洒落たお店の気取ったヤツほど食えないクリームパンでね」

あの頃一番好きだった、誠実かつ堅実なセブンのクリームパンは、もうなくなってしまった。
古いiPhone4Sの中は今でもクリームパンの写真でいっぱい。

世の中に、ラーメン好きの男性は多くいて、ラーメンを食べ歩いてブログをあげたり、体を壊すほどにラーメン二郎に通いつめたりする人もいる。
あの人達はラーメンに対してあばずれにならないのだろうか。
「またハズレかもしれない」と怯えながら暖簾をくぐったりしないのだろうか。
ラーメンはクリームパンに比べて当たりハズレが少ないの?
それともAKBなどのアイドルへの熱中具合のように、男の人は丸ごと信じて夢を抱き続けられるものなのかしら。
ラーメンが自分を裏切るはずがない、ラーメンが美味しくないと思うのは自分が悪い、なんていう風に。


今朝、会社の近所の裏道にまるでたばこ屋みたいな見た目のパン屋があって、本当に久々にクリームパンを手にとった。
別れた男に会った時みたいなきまずさで。
「また傷つくかもしれないよ」と自分に言い聞かせつつ。

外側のパンは給食のコッペパンみたいで照りのない、地味な見た目。
怯えながらかじったクリームは癖のない、普通のクリームパン。
普通のクリームパン!

私、まだ普通のクリームパンに出会えるんだ…。
そんな風に恐る恐る喜ぶ、私は正真正銘クリームパンのあばずれ。

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