生きていくストレス

以前、「ししとうが辛くなるのはストレスが原因だ」という話をきいたことがあって、「ししとうのくせに生意気だぞ!」とジャイアン流に立腹したことがある。
調べてみたらやっぱりストレスだ。

もう、のっけから「ストレスが原因だよ」と無邪気に書いてある。
「ああ暑い!ストレス!」だとか「水!水足りないんですけど!」とか言って辛くなるのか。しかも、ストレスを感じると先がとがってしまうらしい。ナイフみたいにとがっては触る者皆傷つけるんだな、不良だな。


さて先日、神奈川県立生命の星・地球博物館で「貝のことを知ってるカイ」という講演会があって、なんとなく心惹かれて行ってみた。

生命の星・地球博物館の学芸員の方と、海洋研究開発機構の研究員の方のお話で、相模湾にたくさんの種類の貝が住んでいる理由だとか、すごく変わった生態の貝のお話で、とても興味深かった。
講演のあとで質疑応答の時間があったが、挙手する老人たちが皆口をそろえて「長年貝を拾っているが」「貝殻拾いが趣味で」などと言い出すので驚いた。そんな趣味があったのか…。

貝拾い老人たちは聞く。
「ここ最近貝が小さくなった」「アサリの貝の模様は遺伝なのか」
学芸員の方答えて曰く「貝が小さくなったのは、縄文人が大きい貝をたくさんとるから大きいのが淘汰されて小さい貝ばかりになったという仮説がある」「貝の模様は遺伝や食べ物によるものではないと思われる。知能の高い天敵のいる貝は、模様が一定だと食べ物として認識されてしまうため模様を変えているのではないかという仮説がある、また、津波を経験したアサリでストレスで模様が変わった事例が報告されている」との事。

え!と思ってこれまた調べたら本当にストレスだった。

これには同情してしまう。人間の爪だってストレスや栄養失調の時期があると横線が入るもんな。よく生き延びた。
記事によると外国から日本に連れてこられて飼育されているアサリもストレスで模様が変わるらしい。

また、海洋研究開発機構の研究員の方のお話では「必要なら貝は何にだってなれる」とのことだった。
捕食者から逃れるためならば擬態もすれば、発光もする。生き抜くためならば化学合成もするし、脳も捨てる。
種をつなぐために当たり前と言われればそうだけど、すごい。
私など、おかげさまで人間に生まれたので、熊やライオンにでも遭遇しない限り食われる心配はそうそうない。だから「食われないために」なんて考えもしない。
でも植物も貝も、生き物はだいたいすべてひっそりと挑戦したり、あれこれ実験したりしているんだよな、種の存続のために。

「食われる!」「劣悪環境で死ぬかも!」「種が絶滅するかも!」というのはそりゃあ、相当なストレスだろう。
貝の模様が変わるくらい。何にだってなれるくらい。発光だってできるくらい。
そう思ったらししとうがストレスの中で自分を守るために辛くなるのも尖るのもしょうがないなと思えた。

人間にしろ植物にしろ生き物にしろ、貝にしろ、生きていればみんな必ず何かしらのストレスにさらされているものなんだな。その中で、少しでも生きやすくなるようにいろいろな機能や術を身につけて自分を守る。
そうやって進化していくんだと思うと、ストレスって必要なものなんだと思う。
まあ、ししとうはストレスフリーで育てたいものですが。
私、わりとストレスししとうに当たるので。それも小さなストレス。