生くる悩み

日々は大体野球とコアラでできている。
まるでストレスフリーな人生みたいだけれど、それなりに考えたり落ち込んだりすることもある。まあ、そんなに大層なことでもないけれど。

昨日は楽しみにしていた甲子園4日目。あっさり横浜高校が負けてしまうので、「なんたること!…かくなる上はコアラだ!コアラ見るしかない!!」と夕方の埼玉県こども動物自然公園へ。夏休みなのでナイトズー開催中なんですよ。

コアラに夜を認識させるためなのか赤いライト点灯中。

ベイビーコアラ、ニーナは精力的にむしゃむしゃバリバリとユーカリを食いちぎり

葉っぱを食べつくすとママのおっぱいへ。

なるほど、あなたのおデブボディはそのようにしてできていたのね。母の呆れ顔よ…。

コアラたるもの、如何に大人になろうとアイドル雑誌の表紙みたいなキメ顔

初めてコアラのランチタイムを見学したとき、その生き様に衝撃を受けた。
新しい葉っぱがくれば起きて、むしゃむしゃと食べ、何食わぬ顔でポトポトと排便し、また寝てしまう。
これこそがミニマリズムの極地だな。生きる理由なんて考える必要は何もない。ただ食べて排泄して寝る、それだけでこんなに可愛いんだからそれでいいじゃないか!

手紙

手紙

谷川俊太郎の「手紙」という詩の中に「サバンナに棲む鹿だったらよかったのに」という一文があったが、「森に棲むコアラだったらよかったのに」という手紙を書きたくなった。

しかし、何度か見ていると「あ、コアラもそれなりに大変なんだな」という事に気がつく。

新しい葉っぱに囲まれて良席ゲット!とぼんやりしていたら、後から来たおばさんにお尻でぐいぐい追い出される。



おいババア!

ちょっとムカつき顔で振り向きざまにユーカリ食べる。


なんとか安住の地を見つけるも、憂いの表情。

また別の日。新しい葉っぱも来たし、ここ天国!とご機嫌でいられたのもつかの間。

あらー、あの辺良さそう♡おばはん、ジャンプしちゃう。

あら、なんかいる。ねえ、どいて?

おりてちょうだい。おばはんのお尻が置けないでしょ?


ああああああ!


わかればいいのよ。

ねえ、お嬢さん。子どもだからっていつまでも甘やかしてもらえると思ったら大間違いなの。生きていくってことはね、自分の居場所は自分で勝ち取るってことなの。

…。

葉っぱ…ない…。

ママも助けにきてくれない…。

ここで寝るしかないんだ。フカフカの葉っぱもないけど。

群れの中で生きる、社会の中で生きるってことは、人間だろうとコアラだろうと悩み無用じゃいられないものなんだな。いや、例え群れじゃなくて一人で生きるにしたって餌の心配やら危険やら、悩みはつきないんだろう。
どんな素敵なミニマリズムライフでもシンプルライフでも。
悩むことが生きることね。
蒸し暑いコアラ舎でそんなこと考える夏休み。

子守熊

子守熊と書いてコアラ。そのまま「コモリグマ」と呼ばれることもあるんですって。
どこのどなたのセンスだか存じないが、素晴らしいネーミングだ。

去年の9月に生まれた埼玉県こども動物自然公園の赤ちゃんコアラ、ニーナ。これは5月の写真。

3月はこんなだったらしい。ネズミみたい。

そして4月。お母さんのポッケからぴよっと足が出たり。

5月頭

5月末。子どもの成長って早いものね。

6月はまだ赤ちゃんの顔でお母さんにひっついて寝ていた。

7月は少しお姉さんの顔になったけど、まだママにひっついて眠るし、動く時はママに運んでもらう。


一人で葉っぱもたべられるようになった。

でもママと一緒に食べるのが好き。

ふくふくのワガママボディ。

まだまだママのおっぱいも好き。

8月に行ったら、あらびっくり。もうママと離れて一人で眠るようになったのね。耳もふっさり大きくなって。

2人の娘を育て上げた母、ドリー。ようやく子どもが手を離れたのね。育児、お疲れ様でした。立派な母ちゃんだった。

おたくの娘はむっちりボディのセクシーポーズでぐーすかぴーですよ。

そんで葉っぱ食べてデブい顔して笑うので、こっちはもうたまらんのです。

次に行くときは、もっとふさふさの大きな耳になって、大人びた顔立ちになっているんだろう。
この子があと2年や3年すれば母になるのだな、と思うと感慨深い。
はあ、やれやれ。子守熊の成長と巣立ちを見たくて、孫バカのばあちゃんみたいな気持で埼玉へと通い、親バカみたいな気持で写真を撮る。

そんな私を、偉大な母はクールな瞳で見つめるのだけど。

曲がり角ごとの驚きXⅣ 熱々の五平餅

郷土料理のお店で生まれて初めてきりたんぽを食べた時の感想。「あ、ご飯」
飛騨高山で人生初の五平餅を食べた時の感想。「あ、ご飯」
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どちらもつぶしたご飯を棒につけて甘辛系の味噌なんかを塗った感じの食べ物だ。

そんな五平餅、根強い人気があるのか、時々最寄り駅に露店が出ることがある。
そうなると係長が黙っていない。
「今日、駅前に五平餅の店が出てた」
うちの最寄駅にも出てましたよ、と告げると「え!!五平餅のくせに!」と各地への展開が許せない模様。
別にあの人は五平餅の地元、長野や中部の出身ではない。だが、何故だかやたらと五平餅にこだわるのだ。
そして事あるごとに言う。
「うるせえ!熱々の五平餅で引っ叩くぞ!」
営業がワガママを言えば
「五平餅フルスイングするぞ!って言え」
お取引先がやらかせば
「タレが飛び散る勢いで五平餅フルスイングだぞって伝えとけ」
…そんなこと言えるわけないじゃないですか…。

そんな訳でワタクシ、割りと五平餅屋台が気にかかる。
目につくたびに「ああ、係長にフルスイングされる」「五平餅で引っ叩かれる」と怯えながら露店を見ている。

世の中、意外に五平餅の需要は多いらしい。靖国神社の桜の季節も五平餅の屋台が出ていた。

想定外に五平餅に包囲される日々、近所にコメダ珈琲の和喫茶おかげ庵というお店が開店した。
あら、そう、ふーーん、と適当にスルーしていたが、ある日ふとツイッターで「おかげ庵で五平餅焼きた~い♡」というTweetを見かけてしまい戦慄した。
え、何、あの店、五平餅焼けちゃうの。手焼きできちゃうの…。

それならば行ってみるか、と疲れ果てた7月の会社帰り、おかげ庵で五平餅を注文してみたところ、こんな大層な電熱器が出てきて、ちょっとビビる。

コメダの五平餅は飛騨高山とは違ってこんな団子型タイプ。お店のお兄さんによると「まず表面をカリッカリに焼き、胡桃味噌をつけて更に焼くことを繰り返して下さい」とのこと。

了解了解。結構、根気よく待つタイプよ、これ。
しかもタレが熱々で歯の裏側をやけどするヤツ。そして相変わらず五平餅ってご飯。

こんなので引っ叩かれたくないなあ、としみじみ思うのだけど、なんで7月疲れたかって、派遣の子が無断欠勤の上バックレたせいだ。派遣元も連絡が取れなくなっているらしい。
社員証も保険証も持ったまま、PCのワイヤーロックの暗証番号もわからぬままの失踪。
ねえ、係長、今こそ熱々の五平餅であの子を引っ叩いていいよ。
タレが飛び散る勢いでフルスイングしていいんだよ。

光陰矢の如し

土曜日は第99回全国高等学校野球選手権神奈川大会決勝を見に横浜スタジアムに行ってきた。
決勝の組み合わせは横浜高校×東海大相模高校。
去年は夏風邪をひいて家でテレビ観戦だったので、決勝を見に行くのは2年ぶり。
そしてこの横浜×東海大相模という決勝の組み合わせも2年ぶり。
2年前、渡辺監督勇退の年、東海大相模には現中日の小笠原くん、現オリックスの吉田凌くん、青島くん、佐藤くんという4枚看板のすごいピッチャーがいて、打つ方もすごい子がいっぱいいて、横浜高校は手も足も出ずに完封負けだった。

スタンドに頭を下げた後号泣していたキャプテンの相川くん。

2年生だった藤平くんも公家くんも立ち上がれないくらいに泣き崩れていて、

1年生の増田くんはなんだか呆然としてるみたいだった。

準優勝盾を持っての行進だって、まるで遺影を持った葬儀の列みたいにしょんぼりしていた。
あれから2年。

渡辺監督の隣であらいぐまラスカルみたいな顔してた子がずいぶん貫禄のあるお兄ちゃんになったもんだ。

それでも楽しそうないい顔は変わらないもんだね。

ていうより、どんどんいい顔になってきているんだな。

Standard Next(スタンダードネクスト) 2017年 06 月号 [雑誌]

Standard Next(スタンダードネクスト) 2017年 06 月号 [雑誌]

夏前、駅売店で売られていたこの雑誌、あんまりにいい表情で衝動買いしたわ。

外野席の声援に応えるようなエンターテイナーになっちゃって、

高校野球ニュースによると、エースの板川くんに「最後はセンターフライで終わらせてくれ」って言ってたんだってね。
そのセンターフライをつかんで


万波くんとヒップアタック。

完全に筒香くんのアレ。

みんなの輪に向って走って

走って

みんなが待ってて


今年は試合前の円陣ではこのポーズやらないんだなと思っていたら、決勝までとってあったのね。

今年、横浜高校は晴れがましい顔で閉会式に臨んで、東海大相模はお葬式みたいだった。
2年前は逆だった。決勝戦まで勝ち上がることはそれだけですごいのに、ここで勝つか負けるか、赤いリボンのメダルか紺のリボンのメダルかで、本当に天と地ほど両者の表情が違う。

そんな残酷さの中で、幼い顔つきだった男の子はすぐに青年の顔に変わり、次のステージへ進んでいってしまうし、「夏が始まった!」と人をそわそわさせる県大会が終ってしまったら、なんだかもう空も少し高いような気がする。

7月が終わる。

二度訪れる夏

学生の頃、夏休みはいつも、7月はすごくゆっくり感じられて「夏休みが始まった!」「まだこんなに夏休みが残ってる!」と思っていたのに8月に入ったらあっという間だった。

きっと学生さんたちは今「夏休み始まった!」とのんびり構えているんだろう。大人たちはビヤガーデンのオープンや子どもの夏休みや蝉の声や、学生がいなくなって空いた電車に「夏が来たのか」としみじみしているんだろう。

けれど、もう夏は相当たけなわだ。都市対抗も終った。みんな、甲子園が始まるまではまだ本当の夏じゃないと悠長にしているかもしれないが地方大会も相当進み、各地で決勝戦が行われ出場校が決まってきている。
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これは今年の愛知県大会の熾烈なベスト8組み合わせ。
今日、愛知県大会で愛工大名電中京大中京に負けた。名電OBの同僚タカハシさんは「夏、終わったな」と言っていた。
そうだ。
高校野球の地方大会が始まると夏が始まる。そして地方大会で負けると夏が終わる。
やってる選手達は本当に夏が終わって、高校3年間の部活が終わる。
見ているだけの人間は地方大会の終了と共に1度夏が終わり、甲子園の開幕でまた夏が始まる。

これは2014年
高校野球を地方大会から見るようになって、最初は自宅にテレビがなかったこともあり、なんとしてもこの目で見届けなければ、と有給をとって球場へでかけた。
テレビを買ってからもTVKの放送がなければ「絶対行かなければ!」と有給をとった。
だんだん年もとってきて、夏の日差しが億劫で「テレビでいいかな」と尻込みしたり、面倒くさいなあと思ったり。
けれどそんな私を急き立てるようにGoogleフォトが言うのです。
「2年前の今日はこうだったよ」

これは2015年の相模原球場

今は楽天イーグルスの藤平くん。

2013年、カメラを買って、嬉しくて撮った現日ハムの浅間くんと高濱くん。
毎年毎年この時期の写真フォルダには代わり映えしない写真が並ぶ。代わり映えしないけど確実に変わっている世代、確実に変わっていく高校生のお兄ちゃんたち。

だから今年も球場に行くんだ。「暑いんだろうなあ」とめんどくさがりつつ。曇り空に感謝しつつ。

若いってことにやたら圧倒されつつ。
やっぱ野球のユニフォームは高校生の太ももパツパツな着こなしが一番いいよな、とかちょっと変態みたいに思いつつ。

0-2のビハインドから同点2ランホームラン打ってベンチで監督におそらくチューされてる増田珠くん。1年の時からレギュラーだったけどもう3年生か。このままプロに行くかしら。

双方必死の形相でアウト、セーフアピール。

去年スーパー1年生って鳴り物入りで入ってきた万波くんの3ラン。


最後のボールをキャッチする増田くん。

土曜日の決勝戦のために予定は空けてあるけど、決勝まで行くかしらね。
きっと暑くてうんざりして面倒くさいって思いながら出かけるくせに、見てる間は暑いのも忘れてるんだろう。
勝っても負けてもそこで一旦夏が終わる。
あとはテレビで甲子園見ながらアイス食べている間に決勝が来て、そして本当に夏が終わる。
それは「水戸黄門」を見るのと同じくらいの様式美で、そんな繰り返しがしみじみ幸せ。

曲がり角ごとの驚きXⅢ 傍観者・丼・後悔

傍観者には自己の歴史がない。傍観者は舞台の上に居るには居るがしかし、役者ではない。傍観者は聴衆ですらもない。芝居とそれを演ずる役者の命運は聴衆に左右される。が、傍観者の反応は彼以外の他の誰にも効果を及ぼさない。とはいうものの、傍観者は----劇場の消防係にたぶん類似して----舞台の袖に立って役者や聴衆が気づかずに見過ごすものを見る。なかんずく、彼は役者や聴衆とは異なる見方で見る。そして彼は省察する。----省察は鏡ではなくプリズム、それは見たものを屈折させて映し出す。
        ピーター・F・ドラッガー 「傍観者の時代」


渋滞にうんざり疲れて入った夜8時のサービスエリアで、「軽いものでいいや」と500円くらいのヘルシー丼を選んで食券が出た途端、「あー、やっぱり800円払っても普通の海鮮丼にしておくべきだった」って思うことってある。
それを思えば「後悔のない人生」なんてあるもんか。人間、何したって後悔する。

昨日は友人の誕生日ホームパーティーに招待されて行ってきた。学生時代のインカレサークルで知り合ったA。小じんまりとやるのかと思っていたら、朝になって総勢15人くらい招待したという連絡が来て、面倒くさいなあとゴロゴロしていた。
人見知りだし、コミュニケーション能力も高くないし、暑いし。

でも行ったほうがいいんだろう。年取るとだんだん交友関係も狭くなるし。
狭くて何が悪いのかと思わなくもないけど、まあ一応。
動物も人間も社会って大事だからね。

よいしょ、と重い腰をあげ、焼鳥とビール買ってA宅へ。「だいぶ盛り上がってるよー」と迎え入れられた会場では、Aと同じゼミだったというB氏の人生初の恋人お披露目会見が始まるところだ。しかも何月何日に出会い、何月何日に初デートをして…という詳細版。
…長くなりそうだぜ…。

うん…、なるほど、そうか。これは海鮮丼でいうならヘルシー丼。
このふにゃふにゃで話も行動も段取りの悪いB氏は甘~い卵焼き。「ネバネバ系の食べ物が大好きです」という恋人のCさんはオクラだな。
B氏と喧嘩しそうになると「また怒らせちゃって私はダメな人間だ」とCさんは思うらしい。
私だったらスリッパで引っ叩くところだが、これがB氏をメロメロにする「慎ましさ」と「誠実さ」なのだな。お似合いカップル。

そんな2人の甘くネバネバな話に意味不明の茶々を入れ、話の尺を引き伸ばすDは納豆。
素材の味を殺さぬよう大人しく正座して頷きながら話を聞くご学友3人は白米かな。声も小さく、どんな場所でも波風立てず嫌われもせずひっそりと静かに粘り強く生きていけるタイプで、昔はそういう人になりたいと憧れたものだ。
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時折自分の思い出話をぐいぐいと挟んで皆をまとめようとする主催者Aは醤油、「妹の生き方は危うい」「あなた方はなぜ結婚していないのか」「あなた方はどこの会社で何の仕事をしているのか」とスパイシーわさびなAのお姉さん。
コミュ力の高い働く女子ですー、気配り上手なんですー、○○さんのネイルって素敵ですねー、みたいな青じそ女子。大人たちの視線を卵の黄身みたいに絡め取っていく幼子を連れた夫妻。
若き日に学生運動的なものに参加してしまって以来、ちょっとこじらせてる燻され沢庵50代男性。

そんな中に燦然と現れる、元ダンサー、元スポーツライター、海外在住歴有の大トロレディ。
かれこれ3時間以上続いている長い自己紹介、大トロさんの後では辛口のわさび姉さんもキラキラ働く青じそ女子も「私なんてつまらない人生で」「もっと冒険すれば良かった」とぼそぼそ言う。
大トロさんは大トロさんで「もっと堅実に生きれば良かった。才能もないのに追い求めてる場合じゃなかった」と苦笑する。

人は皆、ないものねだりなものですね、神様。

ようやく終わりかけてきた自己紹介を傍目に、輪から外れたところで大トロレディがぼそっと言う。
「最初のあの知らない人ののろけ話、何?どうでもよくない?帰ろうかと思ったわ」
その言葉に納豆子は困惑し、悲しげな顔をする。
ごめんね、私も「ああ、今日はヘルシー丼だな、ヘルシー丼って若干欺瞞の香りがするよな」くらいのことは思ってた。帰るタイミングも探してた。

期待を裏切らない大トロレディは帰りのエレベーターの中、主催者Aに「どういうつもりで私を今日呼んだの?」とバッサリ仰る。「ここにいても大丈夫な人を呼んだの!」と笑顔のA。
そうだねえ、大丈夫だけど、ヘルシー丼にはもったいないかもしれないね。マグロ丼の主役になれる人だから…。

キラキラ光れば光るほど影も濃い。
駅までの帰り道、大トロさんは「どうやったら人生を幸せだって思えるんだろう」とポツリと言う。
何やったって後悔はするんだから、自分で決めて生きてることをいいって思うしかないんじゃないと無責任に返事する。

やれやれ。
世の中いろんな人がいて、みんなそれぞれないものねだりして、毎日何かしら後悔して生きてるもんだね。
そして、年をとったせいか深入りするつもりがないせいか、おとなしく無難に真面目に生きてる人より、クセが強くて人を困惑させたり怒らせたりしちゃうくらいにハッキリ物言う人が、やっぱり面白いね。

と、傍観者の私は省察し、屈折させてこんなの書いてる。

理想の職場

会社から東京ドームへは約10分、神宮だったら30分。
カープファンの係長、中日ファンの同僚もいて、ちょくちょく野球の話もできるし、高校野球勝戦に行くために有給をとっても怒られない、野球好きにとってありがたい職場だ。

6月は営業年度締めや、もうすぐ産休に入る主任の仕事の引き継ぎもあって、とても忙しかった。7月になったら高校野球も始まる、名古屋場所もある…それを楽しみに頑張ろう!
という6月の終わりかけ。

お取引先に、去年突然パタリロ似の新人くんが現れた。
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殿下と同じくお育ちの良いおぼっちゃんで、GW後にはテニス焼けをして現れ、「さすが殿下!」「白いポロシャツ似合いそう」と我々の間で評判だった彼。
彼がなんと、2軍の試合も含めて年間50試合も観戦するコアな日ハムファンであることが判明したのだ。
テニスの王子様かと思ってましたよ」と言ったら「いや、テニスも好きですけど20年来のハムファンです。札幌行く前からです」と胸を張って仰る殿下。更には岩本勉と記念撮影した写真やら、選手のサインで溢れかえったユニフォームの写真やらも見せてくれた。

「あの殿下、年間50試合も見に行くハムファンだったよ!」と中日ファンのタカハシさんに伝えた所、「えええ!年間143試合なのに50試合も行くの?3割出席?」と驚いていた。
…そ、そうね、3割5分くらいね…すごい打率…いや出席率…。

殿下に「私は西武ファンで、今度の東京ドームの日ハム戦見に行くんです」と伝えた所「お!!東映フライヤーズ戦ですね!僕も行くんです!」との事。全然知らなかったけれど、東京ドームでやる2試合はレジェンドシリーズで、東映フライヤーズの復刻ユニフォームなんだそうだ。

そんな訳でスコアボードもフライヤーズ。
ライオンズ5連敗してるし、あっちは高梨、こっちは岡本洋介。まあ負けるだろうな、大谷くんと大田くんと源田くんを楽しみに見よう。写真撮ってあとで殿下にも見せてやろう。

大谷くんと源田くん。

大田くん。

…などと思っていたら、ライオンズ勝った!!!
翌日現れた殿下は苦笑いで、「昨日良かったですね…。ウチの上原…あれ、去年のドライチなんですよ…あれでも」と、昨日ボコボコに打たれたピッチャーについて伏し目がちで仰るので、「で!でもイケメンで、ス、スタイルいいですよね、彼」…と謎フォローを入れた上で「今日、観戦なんですよね。楽しんできてくださいね!」と送り出した。

が、今年のハムはダークサイドに堕ちてしまったのか、その日もライオンズの勝ち。おまけに試合終了時刻の東京ドーム近辺は豪雨だったらしい。きっと身も心もびしょ濡れだっただろう、殿下…。

そんな試合の2日後に我が社で大きなイベントがあった。
球界のレジェンド、山本昌さんの講演会。

正直、7月一番の楽しみはこれだった。4月の申し込み開始日にはタカハシさんと気合を入れて朝イチで申込みを済ませ、カレンダーに予定を記入してウキウキ浮かれ、6月の忙しさの中も「7月に入ったら昌さんだから!」と励まし合い、講演会の日は絶対残業せずに済むように綿密に計画を立て「4日開通チェック、5日営業催促、6日昌さん!」と声出し確認。


当日は2列目センターゲット。
今まで、野球選手のトークショーやイベントに行ったことがなかったので、なんだかもう夢のように浮かれた。星野監督、立浪、ラジコン、と期待を裏切らないトーク運び。野球もすごいけど頭もすごく良くて、だからこそ長くやってこれたんだな、と心底感動した。

中日ファンじゃなくても野球ファンならみんなうらやましがると思う。
なので講演会前も後もタカハシさんと「そういや殿下に“昌さん来るんで”って自慢しないとね」と計画していたが、うっかりライオンズが3連勝してしまったせいか、あれからパタリと音沙汰がない。
昨日もハンカチ王子で負けてしまったし、今日も大谷くん久々の登板が2回持たずにKOで負けちゃったし、相当しょんぼりしてるだろう。ああ、でも早く殿下に自慢してやりたい。


先日、電車の中で偶然、前の職場の同僚Kちゃんに会った。前の職場は今の言い方で言えば完全な「ブラック企業」だった。今はわりと落ち着いたみたいだし行政の指導もあるので、有給ももらえて休みも週2日あって、残業代も出るらしいけれど、当時はそうじゃなかった。若さと使命感みたいなもので10年頑張った。
そんな話をKちゃんとして、「頑張ったよねえ、私達」と称え合った。「でもあのままでは続けられないから、ポストも給料もどうでもいいからともかく休みをください、ってお願いしたの。それで楽になった」とKちゃんは言っていた。
あの頃、本当に余裕がなくて、常に溺れかけみたいな状態でキリキリして鬼婆みたいに怒って仕事をしていた。もっといいやり方があったのかもしれないという後悔も今でもある。

きっとハリーに「喝!」出される…。

それを思うと、本当に今の職場は恵まれている。完全週休2日で有給もとれて、うまく仕事を組み立てれば残業もしなくていい、おまけに野球好きな人が周りに結構いて、球場も近い。講演会に山本昌さんも呼んでくれる。
そりゃあ毎日いろんなこともあるけれど、ここで働けて本当にラッキーだなとつくづく思う勤続8年目。